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岸惠子「孤独という道づれ」 [読書]

ようこそです。 

日本を代表する女優、岸惠子は卓越した文筆家でもあります。 

最新刊「孤独という道づれ」は激動の半生と近況を織り交ぜたエッセイ集。


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扉のしゃれたイラストは交流のあったジャン・コクトー(1889~1963)作。
フランスの詩人、作家、映画監督、画家等々のマルチアーティスト
コクトーだけで長い記事になりそうですが
南フランスのヴィラ(La villa Santo Sospir)の壁に描いたものです。
 
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映画で有名なのは「美女と野獣」(1946)
同性の恋人と言われたジャン・マレーが野獣に化けた王子を熱演。
 
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岸惠子は27、8歳の頃コクトーの最後の舞台演出となった
「濡れ衣(ぬれぎぬ)の妻」をフランスで演じています。
 
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 (全く関係ないけどコクトーは高校時代の数学の先生に似ています^^;)
 
 
処女作「巴里の空はあかね雲」で映画監督イヴ・シアンピとの
結婚・離婚の時期をつづった後
「ベラルーシの林檎」ではユダヤ人や東欧圏の人々を
優れたジャーナリスティックな視点から描ききり
いずれもエッセイ賞を受賞している。
1999年刊行「30年の物語」は
上記2冊より軽やかな筆致で
エッセイであり小説でもあるような珠玉の一冊。
著者もお気に入りだというこの中に
ジャン・コクトーとの舞台体験も書かれていた。
小説の方では自伝的な「風が見ていた」
高齢者の恋愛を描き話題になった「わりなき恋」などがあるけれど
エッセイの方が岸惠子にしか書けないテーマと魅力にあふれ
素晴らしいと思います。
 
ところが「孤独という道づれ」の中で出版社から
『今、日本人のおおかたは、よその国で起こっていることなんかに
興味を持たない。あなたの書くものは、海外でのことが多く、
そこによく時事問題が絡まってくるでしょう・・・』
と言われたと書いてある。
さらにこの幻冬舎の見城社長は
『彼女は、時事問題が絡んで自分に起こったことしか書けない人だ』
と周りに漏らしたそうだ。
同出版社から出された著書にあえてことの顛末を書くのは
世間の読み手に評価を問うという姿勢なのでしょうか。
(それにしても軍配は明らかでは・・・)
  
さて出版社のプレッシャーにもめげず
85歳(!)の日常:
転んでケガをした顔で「徹子の部屋」に出演
あわやカード詐欺に遭遇するなど
華麗な人生の軌跡にそれとなく時事問題をしのばせて
痛快なエッセイが続きます。
  
【顔に流れる川】という章では
パリの庶民の写真で有名なロベルト・ドワノー(1912~1994)の
インタビューで素敵な言葉を引き出している。
『溢れるような水が流れている顔に出会うと
感動して、夢中でシャッターをきります』
『水の流れている顔?』
『眼ですよ、眼は顔の中の川です。』
  
【パリ市庁舎前のキス】(1950)
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【嗚呼、法律! わたしの「独立記念日」】
の章では結婚、離婚、そして住まいの本拠をパリから横浜に移す
それぞれの節目の中で
娘が法律に阻まれなかなか日本国籍を得られなかったことが
切実に語られる。
  
”過去はたからもの、
孤独も苦労もたからもの、
何があってもめげない自分をつくること。”
  
早春の庭に枝をひろげるミモザを眺める著者。
幻想の中で鮮やかな黄色の花が浮かび
いつしか意味もなく微笑んでいた。
  
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私事ですが昨年逝去した叔母が
おととし一緒に行った岸惠子さんの講演で
『過去はたからものよ』
の言葉に感動していたことを
思い出しました。

  
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また次回[ー(長音記号1)]



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